映画好きなので、観た事自体後悔はしていないけど、少なくともここ何年か観た映画の中で最悪の部類に入ることは間違いない。
この映画で泣いたという鑑賞者にはもっと多様な「映画」体験をして欲しい。映画は泣くための装置ではないが、確かにそういうジャンルがある事を否定はしないし、自分もまた邦画については「アオハライド」「ホットロード」等の青春恋愛映画でそこそこの感動を覚えた経験はある。
ここで、いやこの映画は恋愛映画ではないだろうと言う人もいるかも知れない。確かにこの映画(と言うことにすら躊躇を覚えるが)は、普通の恋愛映画ではなく、基本的には「アザーズ」「スプラッシュ」といった、アメリカ的なホラーもしくは恋愛映画のエッセンスをベースにしたSFファンタジーかもしれない。とはいえ、社会性を持たせるためか、幼児大量殺人事件をきっかけとした幽霊譚だとしても、殺人犯に対する冷たい視線とその扱いは倫理的に許容できるものでは無い。勿論、スプラッタホラーはじめ、映画には倫理の枠を超えた様々な面白さがある事は重々承知している。この映画が許し難いのは、その見かけが青春や恋愛、感動といったお涙頂戴の体裁を保ちながら、その基底にある物語が、人の悪は救われないという倫理観にある。いくら当代売れっ子の若手女優三人を揃え、土井裕泰という優れた監督による美しい画で綴ったとしても、いやその画が美しければ美しいほど、むしろこの脚本の罪深さは浮かび上がるのだ。
坂元裕二という人がなぜここまで評価されるのか「花束みたいな恋をした」だけではわからないと思い観てみたのだが、むしろ疑問は深まるだけだった…。こんな作品の劇伴にMOONRIDERSや鈴木慶一を使って欲しくなかったし、美しく才能溢れた広瀬すず、杉咲花、清原果耶、また西田尚美や横浜流星といった女優陣にも謝ってもらいたい。いったい坂元裕二という人は、相米慎二や中上健次から何を学んだのだろう。
映画を観てここまで憤りを覚えたのは久しぶりだ。土井監督と、役者陣のがんばりにはエールを贈りたい。